『経済発展理論を解説し、現在開発途上国が直面している経済発展を阻害する種々の問題点を分析し、「低位均衡の罠」から途上国が脱却する方法を論じなさい。』
はじめに
(1)経済発展と経済成長の相違点、(2)新古典派経済成長理論の妥当性、(3)均衡成長・不均衡成長理論の理解等について、途上国が脱却する方法を述べたい。
1 経済発展と経済成長の相違点
経済成長とは、ある経済の活動規模が増大・拡張していくことである。
経済発展段階説は、一国の経済発展が共通の歴史的段階を経るとみなす学説。フリードリッヒ・リストおよび後続のドイツ歴史学派が形成したモデルが有名であるが、その他の立場からの段階説も提示されている。
議論そのものは比較的単純なものであり、実証的な歴史学などからは批判も寄せられている。しかし、かつては発展途上国などにおいて、近代化政策推進の理論的支柱としての役割も果たすことがしばしばあった。
開発途上国とは、経済発展・開発の水準が先進国に比べて低く、経済成長の途上にある国をさす。アジア、アフリカ、ラテンアメリカ、東ヨーロッパの国々に多い。
略して途上国、または発展途上国とも言う。
1.1 概要
かつては、低開発国、後進国などと呼ばれていたが、「成長しない国」「未開の国」の含意が見られ差別的だとして、開発途上国、もしくは発展途上国という呼び方が一般的になった。
ただし、開発途上国にも幅がある。最貧国(後発開発途上国)と中進国(新興工業国)とでは、現況や抱える問題が違う。
1.2 歴史
第二次世界大戦が終結して間もない頃、アメリカとソ連、欧州の一部の国を除いて他の国はどこも国民所得の水準が低かった。
この頃は、アジアの平均国民所得よりアフリカの平均国民所得のほうが高かった。
その後、ドイツや日本などで急速な経済成長がおきた。続いて1960年代から第三世界での経済成長が始まった。宗主国から独立した植民地諸国だったが、いくつかの国では内戦が勃発し、発展の制約となった。
1970年代、石油危機を境に資源ナショナリズムを強めた産油国が莫大なオイルマネーにより経済発展を遂げた。この頃、対外債務を生成して資本輸入による工業化を図っていた諸国が、原材料価格高騰により変調をきたし対外債務問題を発生させた。
対外債務問題は、1970年代末から1980年代初めにアメリカの金融政策により起きた世界的な金利上昇により解決不能となり、途上国諸国(特に南米諸国)は返済計画のリスケジューリングを受け、厳しい再建の時代を迎えた。
一方、直接投資を導入した東アジア・東南アジア諸国は高い経済成長を維持。1980年代に本格化する日本企業の工場移転などで急速に工業化が進んだ。金利を高めに維持して、外資を導入し資本蓄積をすすめる成長システムは世界から注目を集めた。しかし、1990年代半ばにアメリカが同様の成長システムへと転換したことから競合が起き、1997年には大幅な通貨切り下げに見舞われ成長システムは破綻した(アジア通貨危機)。
1970年代始め頃からはソ連の経済成長が鈍化したものと考えられており、東欧の衛星諸国も成長鈍化に見舞われたものと思われる。1980年代末に東欧革命が連続的に起き、欧州を東西に分けていた壁が消滅した時点においては、西欧諸国と決定的に経済格差が生まれていた。(2)
2 新古典派経済成長理論の妥当性
経済成長理論は、国民経済もしくは世界経済の経済成長の動態、その要因の分析、説明を行うマクロ経済学の一分野。
2.1 概要
数学モデルを用い、経済成長に関する考察を導き、説明を行う事がその主たる内容になっている。なお、経済成長の測定は計量経済学の分野に属し、制度、政策的な要因も考慮して発展途上国の経済成長を分析する分野として開発経済学が存在する。また、過去の経済成長の要因の分析は経済史の一分野で、特に計量経済学や経済成長論の諸理論を多用する経済史研究を指して数量経済史と呼ぶことがある。
2.2 基本的なアイディア
「なぜ、国は豊かになるのか」、「国ごとの豊かさの格差はなぜなのだろうか」、「成長を謳歌できる時期とそうでない時期があるのだが、それはなぜなのであろうか」といった問題は、経済学の主要なテーマである。
近代以降の経済活動においては、生産により生み出された生産物は全て消費されずに、次期の生産要素として再投資する事があたりまえになっている。
この事は、模式化された工場の生産に例えると分かりやすい。ある工場はパソコンの生産を行い、ある年、a年には100億円で建設した工場設備を利用して、200億円の利益を得る事ができたとする。
この時、利益の200億円を全て消費せず、半分だけ消費し、残りの100億円は新規の工場設備に回すものと想定してみる。a年の翌年、a+1年にはa年の倍の200億円分の工場設備がある。倍の工場設備により400億円の利益をあげる事ができ、さらにそのうちの半分を新規の設備にまわすことができれば、a+2年の利益は800億円となり、同じ事を繰り返せば、a+3年の利益は1600億円となる。
この工場に当たる部分を一国と考え、パソコンを農産物から工業製品、様々なサービスにいたる諸々の財、生産設備を資本、利益を国内総生産と置き換えれば、一国の経済成長を示すモデルが出来上がる。
しかし、このモデルを見ても分かるように、話はそれほど簡単ではない。まず、一国の経済においては工場の従業員に相当する総労働力数を変える事ができない。基本的な問題として、工場設備(資本)が倍になったとして、以前と同じ労働力でそれを扱う事ができるのであろうか、ましてや生産量を倍にする事ができるのであろうか。また、消費と次期への生産の割合、貯蓄率はどのように決まるのであろうかという問題がある。同様に、失業率や、過剰生産の問題をどう取り扱うかという問題がある。
また、現実には、科学技術の発展に伴い、より効率的に生産を行える生産設備の登場、すなわち技術革新が存在する。この技術革新はどのように説明されるのであろうか。
こうした様々な問題を説明できなければ経済の変動は説明できない。簡潔で説明力があり、一般的に受け入れられているような成長理論はまだ登場しておらず、様々な研究が行われているのが現状である。(2)
3 均衡成長・不均衡成長理論の理解等
国際不等労働量交換:世界市場においては,より生産的な国民の労働は強度のより大きい労働,より長い労働時間として数えられるので,北は自国商品を国際価値よりも安くであるが,その国民的価値よりも高く南に売ることによって,超過利潤を獲得する。
交易条件の変化:輸入価格と比較した輸出価格の比率を交易条件という.先進国の工業製品の価格が独占力もあって引き上げられるのに比べ,途上国の主要輸出品である一次産品は価格の下落傾向にあり,より少ない工業製品がより多量の一次産品と交換される。
生産面:多国籍企業のように本社・子会社の間で基本的に生産性が同じでも,南の賃金が安いために南に進出した北の資本がより多くの利潤を上げることが出来る。
為替レートの変動:歴史的な傾向として北の通貨が切り上げられ南の通貨が切り下げられて来たが,北の資本は南の資産を安く買い上げることができる。
労働力養成費用:多国籍企業の雇用であれ,出稼ぎ労働者であれ,北が南の労働力を利用するとき,その労働力を養成する費用,すなわち食糧,住居,衣服,教育,保健などの社会的負担を南に押し付け,成果のみを低賃金でやとうことができる。
こうした経済関係が持続する限り,南の貧困,低開発,従属は再生産され続けることになる。
4 途上国が脱却
OECDのDAC参加18カ国はGNPの0.7%を援助に振り向けるという目標をもっているが,実績はおよそ半分の水準である.先進国政府による贈与および低利借款が減少したため,途上国が高利の民間銀行債務を累積することにつながった.金額のほかに,対外援助の問題点としてしばしば指摘されるのは,
a)援助国の政治的・戦略的性格が強い,
b)援助内容が被援助国の実態にあっていない,
c)環境アセスメントが不十分なプロジェクトが多く,輸出産業育成と称して森林資源を乱伐するなど環境破壊を引き起こしている,
d)2国間借款が援助国の輸出につながっている,
e)途上国の支配層に利権を与えて腐敗の原因となり,専制的政権の温存を助長している,などである。
日本のODAは近年,経常収支黒字と「国際貢献」の声を背景に年額100億ドルの水準に達し,アメリカと並んで世界のトップに立っている.日本は円借款によるアジア地域向けインフラストラクチャ融資が多い.アメリカはエジプト,イスラエルなど戦略的重点国,英仏はそれぞれの旧植民地向けが多く,北欧の援助では環境保全や女性の社会参加に重点を置いているなどの特色がある。
援助のあり方については,様々な改善課題があるが,つぎの4点を考えてみたい.
①「魚を与えるのでなく,魚を釣る竿と技術を提供する」ことが大切で,北は南が自立し,永久に従属しないような援助をする。
②北の過剰開発と飽食が地球規模の環境破壊をもたらしており,先進国の工業化の軌跡は発展途上国の経済発展のモデルたりえない.したがって援助の企画・実行について途上国の政策的要求を尊重し,被援助国・地域・関係住民の参加を制度的に保証する。
③援助が直接・間接(援助で浮いた資金の流用)を問わず,武器輸入など軍事費の増加に使われたり,専制的政権の延命に利用されたりしないよう,援助資金の使途について情報公開を徹底する。
④ODAと途上国の地域住民のニーズに詳しいNGOの活動との連携を強化する。(3)
おわりに
我が国経済が長期の低迷に陥っている背景は何か、この暗いトンネルを抜け出す方途は何か、我が国経済が直面する長期的な課題にどう挑んでいくか、さらには、どのような未来が待っているのかを述べた。
まず当面の課題については不良債権問題等の早期抜本的解決を最優先課題とし、あわせて総需要喚起のためのマクロ経済政策と供給サイドの大胆な構造改革を組み合わせた政策体系を展開することによってこれまでの「失われた10年」における成長阻害要因を除去することに成功し「新たな10年」へと挑戦する実力を備えることができるとみた。
我が国経済社会が挑戦しなければならない長期的な課題はさらに重い。しかしながら、それらの課題を解決し、新しいグロ-バル時代の中で日本経済が世界に貢献しうる「可能性の窓」は開かれている。そのためにはこれまでの経済社会システムに大きな変革を伴わなければならない。本報告書では今後の我が国が目指すべき基本的方向として「透明で公正な市場システム」と「環境と調和した社会」という2つの視点を踏まえ、地球環境問題やグローバル化に対応した産業構造の高度化、労働市場の柔軟性の確保、金融・資本市場の効率化、経済システムと調和し、将来世代に過度の負担を残さない財政・社会保障制度の設計等によって労働力、資本、技術など経済のダイナミズムを支える諸要素が効率的に利用されるならば、持続的な経済成長が維持され、環境を守り、新しい基準としての社会的公正を確保することが可能となり、このシステムと果実を「プラスのストック」として将来世代に継承していくことができる。(4)
参考文献
(1)『新版開発経済学』速水祐次郎著、134-151頁。
(2)『経済発展の理論』西川潤著、14-21頁、159-167頁。
(3)『東アジアの開発経済学』大野健一・桜井宏二郎著、183-191頁。
(4)『経済審議会経済社会展望部会報告書』平成10年6月
http://www5.cao.go.jp/98/e/19980622e-tenbou.html

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